本記事ではTVアニメ「THE ビッグオー」の設定について解説とか考察をしていきます。
ネタバレの配慮などは一切しておりませんのでご注意ください。
またビッグオーという作品自体、製作者が「こう」と確定させていない設定が多いこともご留意ください。
今回はパラダイム社初代社長ゴードン・ローズウォーターについて。
確定していること
初代パラダイムグループの総帥で、
パラダイムシティを創設して40年前の大災厄からの復興に尽力した人。
年齢はオフィシャルガイドに記載されていませんが、
アレックスが43歳なので70歳ぐらいかと思われます。
40年前の大災厄の経験者で、それ以前のことをメトロポリスに書き記した人。
そして40年前にロジャー・スミスと世界の創造主とのネゴシエートを頼んだ人。
オフィシャルガイドのインタビューからすると、
創作世界において唯一この世界が誰かにクリエイトされた世界だと知ることができた役者。
物語での役割
物語上の役割としては、謎を更に謎深くする狂言回しの存在でしょう。
発言内容がとにかく抽象的で、登場キャラクターや視聴者をモヤモヤさせる存在。
そして先述通り、世界の構成から自分達の存在意義まで全てを知っていた人。
抽象的な発言ばかりしていたのは恐らく40年前の真実を知っている人間は舞台から排除されるからでしょう。
私は知ってるかもしれないし、知らないかもしれない。
とメモリーの真実を理解しているかを濁してその強制力を回避し続けていたのではないかと。
本当にメモリーを失っていた可能性もありますけど。
最終的にアレックスの手で焼殺されそうになり、一時的に認知症みたいになってましたけどね。
では、これ以降は基本的に私の推測が入ります。
エンジェルの救済
エンジェルの背中のアザに気づき、エンジェルが現実世界へ帰る道標となったゴードン。
エンジェルの項目で書きましたが、これは本来ヴェラの約目です。
ただ想定とは異なる点があったため、ヴェラが自滅してゴードンに回ってしまった役。
それが、ゴードンが世界の真実を知っていたということ。
本来ただの役者であるゴードンは世界の真実など知らず、
知らないままメトロポリスを書いて、それが本当に起こったことなのだと信じ、
そして作品世界が滅ぶ、もしくはヴィヌスにリセットされる際は一緒に消滅したと思われます。
しかし世界の真実を知ったことで色んな布石をバラ撒いてしまい、
エンジェルが知らない内に作品世界がめちゃくちゃ混乱していた元凶。
それがトマトであったり、ロジャーへの依頼だったりしたわけです。
彼は本当に40年生きているのか
さて、一つ問題となるのが彼は本当に70歳なのかという点。
勿論作品のキャラクター設定としては70歳なのですが、
それが我々人間の感覚と同じ『70年の時を重ねた存在』なのかということ。
これは少なくとも70年は生きていないと思います。
最終話の現実のエンジェルが大きく見積もっても40代に見えるからです。
作中の26歳よりも老けて見えるので30前後ではないかと思いますけど。
重要なのは、ゴードンは年齢通りの記憶を持っていないということ。
つまり彼はあくまで
「初代パラダイムグループの総帥で、40年前の大災厄からの復興に尽力した人物」
という設定(メモリー)を持ったキャラクターでしかないということ。
40年前の復興
ではそうすると、本当に40年前にパラダイムシティは創設されたのかという点。
これは恐らく否です。
ビッグオーという演劇が数ヶ月前、または数年前に始まったとして、
そこにあったのは『40年前に創設されたパラダイムシティ』であるからです。
作品世界では40年前の何かによって全ての記憶を失った、などと解説されていますが
実際のパラダイムシティは『40年前の何かによって全ての記憶を失った街』と設定された舞台だからです。
そこに時間の概念は存在しません。
いつ誰が見たところでパラダイムシティは
『40年前の何かによって全ての記憶を失った街』
でしかないからです。
同じくゴードン・ローズウォーターもパラダイムグループの初代総帥で
40年前に人類を護るために活躍した70歳ぐらいのおじいちゃんでしかないのです。
ロジャーとの契約
では何故ゴードンはメモリーを失う前のロジャーと契約を交わすことができたのか。
その内容からして本来の役者が依頼できるものではありません。
Act:25の台詞を抜き出すと
この世界が壮大なるステージだとしたら、我々人間はそのステージで役割を演じる役者に過ぎない。
メモリーを持つ必要などない。
だが、その役割を変えられるものがいても良いはずだ。
この世界を演出する存在と交渉してもらいたい。役者が監督の設定した役割を超えて存在できる、なんてことを脚本家が脚本に書くはずがありません。
つまりゴードンはエンジェルの意思とは関係なく、40年前にロジャーと契約しているのです。
では40年前という存在しない時間軸にて何故ゴードンは勝手に設定を付け足せたのか。
これを『演劇』という設定にて説明できるのは一つだけです。
所謂『過去編』
ゴードンが40年前にこういうことをしていた、と説明するための過去編を舞台としている場合、
ゴードンは30歳ぐらいのゴードン・ローズウォーターとして行動できるのです。
この30歳ぐらいのゴードンが過去編にてロジャーと契約したという事実(メモリー)を作成します。
すると現代編に戻ってきた場合もこの事実は継承されます。
所謂『後付設定』というやつです。
その後付設定を監督に伝えぬまま役者がアドリブで行ったという話。
こうすることでゴードンはエンジェルも知らない設定を『今の時間軸』へと持ってくることができたのです。
何故40年前に契約したのかは定かではありませんが、
ひょっとしたら40年前の自分になる前はクリエイターの存在を信じてなかったのかもしれません。
因みにこの予測は妄想ではなく、インタビューからの推測です。
ロジャーが40年前から容姿が変わらない点についてインタビューでは
Q.ロジャーは40年前から容姿が変わってませんけど、あれはエンジェルにとって特別な存在だったからですか?
A.そういうことでいいと思います。いわゆるアンタッチャブルな存在にしてしまったんですね。
オフィシャルガイド P.98この応え、最初の『そういうことでいいと思います』が凄く引っかかったのです。
ロジャーが特別な存在になってしまったことを肯定しているのに、『そういうことでいい』と質問内容を否定しています。
普通に返すなら『そうですね』とかになると思います。
つまり質問内容としては否定したいが、結果は同じになったということ。
この否定したい部分が、ロジャーは40年の時を重ねているわけではない、ということではないかと思ったからです。
この辺りはロジャー・スミスの項にて補足します。
トマト
ゴードンが過去編にてもう一つ追加した設定、それがメモリーを植え付けた人間の存在。
40年前のメモリー、即ちキャラクター設定を他のキャラクターに植え付けるという行為。
それで何ができるかの言われれば、恐らく何もできないでしょう。
例えば大工の役割を設定されたキャラがいたとして、
その大工の設定を踊り子の設定を持つ子供(キャラ)に移植。
とはいえ過去編(この場合は40年前ではない)で移植した設定は現代編ですぐ顕在化するものではない。
やがて移植された踊り子が大工のメモリーを顕在化させたものとして、
それは踊り子も大工もできる一人のキャラクターにしかなりません。
とはいえ別のキャラクターの設定を引き継いだということは、
自分を確立する要素がなくなるということです。
23歳の女の踊り子だと思っていたけど、実は56歳のおじさんだったんだ私は。
なんて言われても意味がわかりません。
意味がわかりませんが、この世界の人間が実は記憶通りの存在ではなかったことがわかります。
ゴードンが何故これをしていたかは、
恐らく自分以外の役者は世界の真実を認識できるのかの確認のため。
もう一つはAct:13での『せっかくのトマトが腐ってしまう』の台詞から察するに、
ロジャーと交わして契約の一文にあった『その役割を変えられるもの』を
役者側が行えるのかという確認でしょう。
結果として真実の認識はできたのですが、
そんな存在は舞台にいてはいけないということで排除されました。
結局の所、何の因果かゴードンがメトロポリスという台本を手にできてしまっただけで、
創作世界のキャラクターはそれ以上の存在にはなれなかったということです。
ゴードンはエゴの塊
以上が、役者の自由を望みながら割と創作世界をめちゃくちゃにしていたゴードン・ローズウォーターのお話です。
まぁ原因としては、ロジャーがいつの間にかメモリーすっ飛ばして契約した事実を忘れていたから、
40年前のメモリーの移植という方法を強行したのかもしれませんけどね。
というわけで次回は主人公ロジャー・スミスについて。