本記事ではTVアニメ「THE ビッグオー」の設定について解説とか考察をしていきます。
ネタバレの配慮などは一切しておりませんのでご注意ください。
またビッグオーという作品自体、製作者が「こう」と確定させていない設定が多いこともご留意ください。
今回はビッグオーの舞台であるパラダイムシティについて。
基本設定
はるか過去、かつてマンハッタンと呼ばれた場所に位置するドームに囲まれた都市。
そして40年前のある日を堺にそれ以前の記憶をすべて失ってしまった街。
オフィシャルガイド P.38よりビッグオーの作品世界自体は40年前の起こった何かによって半ば滅んでしまい、
劣悪な地球環境から居住区を護るように作られたのがパラダイムシティを織り成すドームである。
まぁこういう設定により、荒廃したドーム外と普通に暮らせるドーム内を隔てる役割を持っています。
では真相はどうだったかと言うと、
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この街はね、ロジャー、40年前の記憶がない街として想像された舞台なんだ。
メモリーの有無を問うのはナンセンスだよ
Act:26 ビッグイヤーの台詞よりつまりビッグオーの世界というのは創造主が作った仮初の世界だったということ。
ロジャー達登場人物はそこで劇を演じていただけだということ。
誰が? についてはオフィシャルガイドの製作者インタビューにこう書かれています。
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エンジェルというクリエイターが自分の創ったキャラクターであるロジャーに恋をしてしまった話
オフィシャルガイド P.98よりつまり我々視聴者から見ると、作品の登場人物であるエンジェルが本当は世界の外にいる存在であり、
そのエンジェルがロジャー達の劇を創ったということ。
このエンジェルの行動については別の記事で解説します。
作り物の街と人間
というわけで、はっきり言ってしまえばパラダイムシティなんてものは最初から存在しないのです。
エンジェルが創ったお話の中に出てくる、40年前の記憶を失ったという設定で作られた架空の街。
ここで重要になってくるのは登場人物も作り物かってこと。
作り物は作り物なのですけど、それはプログラム通りにしか動かないロボットなのかということ。
これについては明確にされていないので色々推察できますが、
私としては勝手に動くAI的なものとしています。
文章を書く人間にとって「キャラクターが勝手に動く」って表現はあるのですけど、
普通の視聴者からすればそんな感覚はないわけで。
なら誰かにクリエイトされた世界だったとしても、登場人物は自由に動く存在なのだと。
クリエイターが決めたのは話の大筋だけで、あとは登場人物達が勝手に演じて出来上がった話なのだということ。
まぁそうしないと最終話のエンジェルは自己解決しただけで終わってしまいますしね。
因みに製作者インタビューではこの辺りはどっちでも取れるようにしたらしく、
視聴者の捉え方に任せているそうです。
だから我々がTHE ビッグオーって作品の登場人物にどんな感情を抱いたって正しい。
住民が恐れる地下
では作品が始まってからず~っと設定は隠されてきたのかと言うと、そうでもなかったりします。
随所で矛盾を色々抱えているのですが、その際たる物がパラダイムシティの地下にあった謎の空間。
Act:04で登場して、最終話付近まで以後殆ど語られていませんが
これは恐らくパラダイムシティを支えるためのバックヤードのようなものと思っています。
つまり小道具の置き場所。
登場人物がバックヤードに引っ込むのはどんな時かと言われれば、それは場面転換や役目を終えた時です。
即ち絶賛役目を演じている登場人物にとって認識してはいけない場所、それがパラダイムシティの地下です。
故に登場人物は地下を恐れているのでしょう。
不安だからと言うよりはそれを知ってはいけないので。
とはいえそこに辿り着いた『人間』は二人います。
ロジャー・スミスとシュバルツ・バルト。
ロジャーはドロシーの援護があったから(この辺の設定も他で)。
シュバルツは世界が虚像だと知らないながらも、虚像であることも含めて知ろうとしたからでしょう。
地下に行こうとしたときにロジャーを襲った恐怖心やR・Dといった抑止力はあるにせよ、
何らかの力や意思の持ち方があれば克服はできるのだと思われます。
パラダイムシティの構造
では最終的に明かされたパラダイムシティの全容はどうだったのか。
まずは空の上、鉛色の雲の更に上に隠されていたものはただの舞台照明。
人工衛星が堕ちてきたのだから当然その上には宇宙が存在するのだろう、
なんて思っていたらそこにあったのは舞台の骨組み。
登場人物からしたら何で自分達の頭の上によく知った機械があるのだろう、
という意味不明ながら世界の構造を理解できてしまうようなそれ。
地下にバックヤードがある。
ならそれより更に下を外から見たらどうなっていたのか。
それが、最終話で海中に落とされたビッグオー/ロジャーが目にした歯車。
パラダイムシティを支える機械じかけの支柱。
ただの作り物じゃないかとひと目で理解できてしまうそれ。
この二つを以て、パラダイムシティとは確かに作り物なんだなと理解させられる展開ですね。
最初から何もかもが存在しない街
というわけでパラダイムシティなんてものは存在しません。
その存在しない街で架空のキャラクター達はどんな思いでどんな行動をしていたのか。
それを観察する舞台だったのが『THE ビッグオー』という作品です。
故に作品設定の根幹を覆す話『40年前の何か』なんてものも存在しません。
では、次回はその『40年前の何か』